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旧・広島陸軍被服支廠の活用案作成のために

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広島文学資料保全の会  土屋時子さんより掲載の許可を頂きましたので、ご紹介します。


旧・広島陸軍被服支廠の活用案作成のために

1 なぜ保存・活用する必要があるのか

4棟の旧被服支廠は、軍都広島の証人であり、被爆の惨禍を伝える証人であり、戦後の広島を語る証人であり、つまり近代から現代までの「広島の歴史を物語る、数少ない被爆建造物」である。2019年に広島を訪れたローマ教皇フランシスコは広島を「記憶と未来にあふれる場所」と呼んだ。

そのレンガ倉庫を、「核廃絶」「平和」「未来」をテーマとして、次の世代の人々に 「記憶をつなぐ」と共に、「広島の街を考える」きっかけを与えるように保存・リニューアルし、活用しなければならない。

2 保存・活用にあたってのコンセプト

  • 「国際平和文化都市」の見える化[1]広島市には「平和記念都市建設法」があり、平和都市にふさわしい
  • 文化施設が求められるが、未だ博物館も文学館も無く、文化都市とは言い難い、市と県が協力して国際平 和文化都市実現のために推進する。

3 保存後どのように活用するのか

平和を破壊する戦争の記録、記憶をテーマとした表現物であるアート<含むネットアートの危機の時代に人々にとって何が必要と言えば、思考の糧となる歴史的視点、人文学の言葉、想像力を養うことである。アートが社会に与える影響は間接的だが想像の源である。

文学、絵画、彫刻、音楽、演劇、舞踊など、独特の表現様式によって美を創作・表現する活動、またはその作品の発表など、「芸術を創造する場」「芸術の祭典の場」とする。

アートに加え、人々が繋がり、行き交い、賑わう場として、広島県全ての物産を集め、地域と島々、山間の人々をつなぐ市場「バザールの館」とする。広島県は海の幸、山の幸が豊かで、戦前の中島地区は集産場として賑わったが、その再興の場とする。

4 旧被服支廠の具体的活用案

「ひろしま観光立県推進基本計画」によれば、平成30年度外国人観光客は275万人を超えている。広島県は欧米圏からの人気(戦争の歴史を持つことへの関心)が高く、周遊ルートの整備がインバウンド市場成長の鍵―と言われている。各地域や産官学が連携して観光資源の充実、受け入れ体制の整備、戦争遺跡の見直し等を行うことが必要である。

そのためには、広島ならでの地域特性と言える、ピースツーリズム、グリーフツーリズム、エコツーリズムを充実させることが必要で、被服支廠の存在と活用は無くてはならぬ。

被服支廠だけが語れるオリジナリティ―を活用案に盛り込み、平和公園~被服支廠~比治山(平和の丘)~宇品旧桟橋をつなぎ、瀬戸内海の島々《民泊地》まで広げることにより、観光客が長期滞在する可能性も増す。集客対象は全世代であるが、修学旅行生も多く、若い世代の集客が望まれる。


[1] 平和公園のコンセプト「平和を創る工場―factory」「ヒューマン・リレイションズ」―丹下健三の思想

次のページ:「4棟の具体的な内容についての一案」

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